テーブルマナー、結婚式でのマナー、ビジネスマナー等々、物事には明文化されていないマナー(≒行儀、作法)が多数存在します。そもそもマナーとは「他者を気遣う」という気持ちの現れであり、相手を不快にさせないよう個人個人が考えを巡らして行うものです。登山においては、「安全」が大前提となりますので、この「安全」という要素も加わります。
雑誌やインターネット等で登山マナーについて掲載されていることがありますが、ここではオリジナル版をご紹介したいと思います。他にも、こういうのがあるよ!ということがございましたら、加筆させていただきますので、お問い合わせページよりご連絡頂けますと幸いです\(^o^)/
「登山計画書(登山届出)」とは、登山の行動予定や行動を共にするメンバー、装備等を記した用紙のことで、登山口にある「登山届ポスト」又は警察署HPからメール(※1)で管轄の警察署に提出します。書くのは少し時間がかかるため、事前に家で準備しておくことを推奨します。
(※1…例として長野県警察本部のHPをご覧ください。)
「登山計画書」を提出する目的は、万が一、山岳遭難事故が発生した場合に、早急な救助を図り、救助者の二次遭難を防ぐために提出します。早急な救助により、生存可能性を高めることができるほか、救助に要する時間とコストを最小限に抑えることで、救助者の二次遭難の防止や救助費用負担者の負担軽減につなげることができます。そのため、「自分だけの問題」ではなく、家族や救助者に対するマナーといえるでしょう。
なお、警察署に提出するだけでなく、緊急連絡先に指定している親族(又は職場の同僚や親しい知人、山頂caféであれば代表や支部長等)にも渡したり、計画内容を知らせておくほか、行動中も自分で持参しておくとベストでしょう。
「登山」は自然の中でのスポーツです。スポーツである以上、ケガはつきものです。では、ケガによる入院や通院に備えて「傷害保険」に加入しておけば十分でしょうか?救助場面に遭遇したことがないとイメージしづらいかもしれませんが、登山特有のリスクとして「救助の要請」と「損害賠償」の問題があります。
例えば、前者は、登山道で転倒し、足をくじいてしまい自力での下山ができなくなった場合です。自力で無理に下山し、ケガを悪化させて回復不可能になることもあるかもしれません。こういった場合、周りの登山者に救助を求めたり、携帯電話を使って、近くの山小屋や地元の山岳会に救助を要請することになります。ケガの程度が重い場合は、ヘリコプターでの救助になるかもしれません。その場合、当然ながら「救助費用」が発生します。100万円近くの救助費用を請求されることもあるようです。
一方、後者は、狭い登山道ですれ違いの際に、自分は避けたつもりでも注意不足でザックがすれ違う登山者にあたってしまい、運悪く滑落させてしまった場合や、登山道でない道を歩いてしまい、落石を生じさせたことによって、下にいた登山者に当たりケガをさせてしまった場合などが想定されます。もし命にかかわるようなことがあれば、数千万円~1億円以上の損害賠償金(+高い弁護士費用)を支払うことにもなりかねません。
というわけで、傷害保険だけでは足りませんので、特約として「救援者費用特約(※1)」と「個人賠償責任特約」を付加しなくては十分とは言えません。山岳保険に入らず山に登るのは、無保険で自動車を運転することと同じくらい恐いことであると認識して頂きたいと思います。
(※1…一般的な登山ではなく、アイゼンやピッケル、ロープなどを使用する「山岳登攀」やロッククライミングの場合は、この特約ではカバーできず、「遭難捜索費用特約」が必要になってきます。山岳登攀か一般的な登山かの判断が難しいこともありますが、保険料は3~4倍高くなります。基本的な登山道を夏山シーズンに登る場合は、救援者費用保険で足りるでしょう。詳しくは損害保険会社へご相談下さい。)
なお、「山頂café」ではメンバー向けに団体保険を用意し、手続きの面倒さを省く方法による加入促進策を取っているほか、2013年10月以降はサークル加入に際してなんらかの山岳保険に加入することを義務としています。
2013年、富士山が世界文化遺産に登録されました。しかし登録に至る前には、数回落選しているようです。その理由の一つに「ゴミ」問題があったそうです。富士山以外の山でも、アメの包み紙やペットボトル、アルミ缶などの「ゴミ」を見かけることがあります。本当に自然が好きな人であれば、わざとゴミを捨てるような愚かな真似はしないと思いますが、車での行き帰りの途中にある高速道路にあるゴミ捨て場で捨てていく方たちもたまに見かけます。できるだけ「家まで」持ち帰ることがマナーと言えるでしょう。また、もし登山道で落ちているゴミがありましたら、できるだけ拾ってあげるとよいでしょう。私もついつい拾ってしまう癖ができてしまいましたが、下山するときにはビニール袋が膨らんでいると結構嬉しいものです。
山には、都会では見られないような珍しい高山植物(個人的にコマクサの綺麗さは驚きました)が多数存在し、ライチョウやオコジョやカモシカなど、多種多様な生物が楽しく暮らしています。登山道が設けられている理由は、こうした自然を破壊しないためでもありますので、登山道から離れることがないようにしましょう。
また、登山道を離れることは落石を生じやすくさせるため非常に危険です。しっかりと登山道を歩きましょう。また、登山道には善意で設けられたロープや鎖やハシゴ、木道があります。これらを頼りすぎると消耗も早くなります。もちろん安全が第一ではありますが、できるだけこうした設備に負担をかけずに感謝しながら登るようにしましょう。特に冬山では、アイゼンを装着しますが、雪のない箇所では木道を傷つけてしまうことが多いです。アイゼンを履いているときはできるだけ雪のある部分を歩くようにしましょう。
山小屋やテント場で談笑していると、大自然の壮大さも影響してなのか、ついつい声が大きくなって、はしゃいでしまいます。恥ずかしながら私も注意を受けたことがあります。山小屋ではほとんどが20時消灯になっていますので、20時より遅くまで談笑していることはまずないと思いますが、消灯時間のないテント場では注意が必要です。テント内はプライベート空間ですが、テント場はプライベートな場ではありませんので、それを踏まえたうえで20時には就寝しましょう。
特に、山小屋やテント場では疲れて早い時間から眠っている人や体調が悪くて安静にしている人がいることも念頭に置いておかなくてはなりません。1泊の登山では、20時には就寝して、翌朝5時には起床するのがスタンダードです。行程によっては、4時から行動開始したこともあります。都会とは時間の感覚が異なりますので、これもしっかりと理解してまわりにあわせるようにしましょう。
山にとって「水」は非常に貴重です。その年の降水量によっては、登山道にある水場(湧水)が枯れてしまうこともよくあります。とにかく節水を心がけましょう。
また、山で食べるカップラーメンのおいしさには驚愕しますが、カップラーメンを食べて残ったスープを山に捨てるようなことがあっては絶対にいけません(飲み切るか、余ったスープを入れるボトルを用意するなどしましょう)。
・すれ違い時は登りの人や団体登山の場合は少人数のパーティを優先させ通行させる。(※場所によっては例外あり)
・すれ違いざまに避ける人は、滑落しないように『山側』に避ける。(※ザックなどがあたらないようにしましょう!)
・ハシゴ場や鎖場では、ハシゴや鎖に過度な負荷をかけないように速やかに一人ずつ通過するようにする。
(※ハシゴや鎖場の管理が行き届いていない場合があります。過度に体重をかけることは事故につながる可能性もあります。)
・万が一、落石を生じさせてしまったときには、「ラーク!(落)」と叫んで下の登山者に即座に知らせる。(※登山道を外れると落石を誘発しやすいので、外れてはいけません。)
・休憩中は登山道は封鎖しない(※当然邪魔になるためです。)
・早いパーティには追い抜いてもらう。
(※先頭にいるリーダーはなかなか気付かないことも多いので、最後尾にいる方は後ろに注意しましょう。トレランブームなのか、走って無理に追い越そうとする登山者がいるのは残念です…)
・すれ違いざまや追い抜きざまにはきちんと挨拶をする。
(※声をかけると記憶に残るものです。遭難時の情報に役立ったりします。)
・すれ違う他の登山者から登山道に情報を求められた時には親切に応える(※助け合いです。登山道の情報などは親切に教えてあげるようにしましょう。)
などなど。これらの登山マナーはすべて「安全」に基づいて培われたものですので、しっかりと守り、登山者みんなが気持ちよく登山できるようにしましょう\(^o^)/
(1)日本山岳遺産基金 登山マナー
http://sangakuisan.yamakei.co.jp/oyako/manner.html
(2)富士登山オフィシャルサイト 「富士登山のマナー」
http://www.fujisan-climb.jp/manner/index.html#block4
(3)長野県山岳遭難防止対策協会 「山登り10訓」
http://www.nagano-tabi.net/pdf/gaku10kun.pdf